書き込みの削除

ウェブフォーム・メールでの請求

書き込みを削除する権限は、多くの場合、発信者ではなく、ウェブサイトの管理者(サイト管理者)やウェブサーバの管理者(サーバ管理者)にあります。
サイト管理者やサーバ管理者は、通常、書き込みの削除について独自のルールを設けており、削除の請求があればそれに則って対応しています。その結果、サイト管理者等が任意に削除に応じるケースも多くあります。

プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求

サイト管理者やサーバ管理者はプロバイダ責任制限法の規制の対象となっています。
そして、プロバイダ責任制限法の運用については、インターネットサービスプロバイダ等で構成される一般社団法人テレコムサービス協会がガイドラインを定めています。
問題のある書き込みについてはこのガイドラインに沿ってサイト管理者等に対して侵害情報の送信防止措置を請求することができます。
請求を受けたサイト管理者等はガイドラインに則って侵害情報の送信防止措置を講ずるか否か判断することになります。

投稿記事削除仮処分命令の取得と削除要請

サイト管理者等に対するウェブフォーム・メールでの削除請求やプロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求を行なっても、サイト管理者等がこれに任意に応じないことがあります。
また、サイト管理者等や状況によってはこれらの方法が適切でない場合もあります。
そこで、裁判所に対して投稿記事削除の仮処分命令を申し立てて、裁判所の仮処分命令を取得することで、サイト管理者等に書き込みを削除させることができます。
もっとも、裁判所の仮処分命令を取得した場合、ほとんどのケースでは、サイト管理者等に対して削除を要請することで、任意に書き込みが削除されます。

ウェブフォーム・メールでの請求

サイト管理者やサーバ管理者ごとに取り扱いが異なりますが、概ね次のような手順でウェブフォーム・メールでの削除請求を行なうことになります。

1 削除ガイドライン等の確認

ウェブフォーム・メールでの削除請求が可能なサイト管理者等の場合、通常、そのウェブサイト内に『削除依頼』など削除対応に関するページが設けられています。
そこには、『削除ガイドライン』など書き込みの削除に関する独自のルールが記載されていますので、これを読み、削除の手順や必要情報を確認しておきましょう。

2 ウェブフォーム・メールの送信

各ウェブサイトに用意されているウェブフォームやメールアドレスを用いて、必要情報を入力・記載のうえ、サイト管理者等に削除を請求します。
削除依頼フォームへのリンクや請求先のメールアドレスは、基本的に、各ウェブサイト上に設置・記載されていますので、そちらをご確認下さい。

削除請求の際は以下の点に注意が必要です
削除依頼が公開される可能性があります

ウェブサイトの中には「削除依頼を公開する場合がある」と記載されているケースがあります。
基本的には不当な削除依頼に対するサイト管理者としての対抗措置として記載されているものですが、2chなど削除依頼をすべて機械的に公開するウェブサイトもあります。
削除依頼が公開される可能性がある場合には、公開されては困る情報をウェブフォームに記載しないように注意が必要です。

アクセスログが削除されてしまう可能性があります

サイト管理者等に書き込みの削除を請求した結果、書き込みを削除するのと同時にそのアクセスログも削除されてしまう可能性があります。
今後、発信者情報の開示請求を検討している場合には、削除を求めるウェブフォーム・メールに、『発信者情報開示請求予定のためアクセスログは消去せず、保存して欲しい』旨も記載しておく必要があります。

プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求

サイト管理者やサーバ管理者等に対しては、プロバイダ責任制限法に則って侵害情報の送信防止措置を講ずるよう請求することできます。

1 侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書の送付

サイト管理者等に対して侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書を送付して、問題のある書き込みを今後送信しないための措置を講ずるように求めます。

なお、侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書の書式はプロバイダ責任制限法関連情報WEBサイト(http://www.isplaw.jp/)よりダウンロードできます。

2 発信者に対する意見照会

請求を受けたサイト管理者等は、発信者と連絡を取ることができない場合等を除き、原則として発信者に意見照会を行います。
その回答期限が経過した後、請求者に正式な回答を行うところが多く、回答が得られるまで通常は1か月程度かかります。

ガイドラインに則った請求の際は以下の点に注意が必要です

意見照会により、請求者が書き込みの削除を求めていることが発信者にわかってしまいます。
また、氏名など発信者に知られたくない情報がある場合にはそのことを請求時に明らかにしておく必要があります。
なお、意見照会の際に、発信者に示しても良い情報の範囲についてサイト管理者等から問い合わせがある場合もあります。

投稿記事削除仮処分命令の取得と削除要請

サイト管理者等が任意に削除に応じない等の事情がある場合には、次のような手順で、裁判所に対して投稿記事削除の仮処分命令を申し立て、仮処分命令を取得したうえで、サイト管理者等に削除を求めることになります。

1 投稿記事削除の仮処分命令の申立て

投稿記事削除の仮処分命令申立書及び添付書類を準備して、管轄裁判所にこれを提出して仮処分命令を申し立てます。

管轄裁判所

相手方である管理者等の住所地等
又は
被害者である請求者の住所地等
(相手方や請求者が法人の場合:主たる事務所又は営業所の所在地)

*相手方の住所地等が海外の場合でも一定の場合には日本の裁判所で仮処分を申し立てることができます。

申立書及び添付書類

投稿記事削除仮処分命令申立書には、当事者、権利侵害の説明(誰の、どのような権利利益が侵害されたのか)、仮処分命令によって早期に保全すべき必要性などを記載する必要があります。
また、削除の対象となる書き込みの目録(投稿記事目録)を用意する必要があり、必要に応じて証拠資料を添付する必要があります。
なお、債務者(削除義務者)のサイト管理者等が法人である場合には、資格証明書を添付する必要があります。

2 債権者面接

仮処分を申し立てた場合、債権者(削除請求者)本人との面接を行う場合があります。面接では主張内容について裁判官から質問されます。

3 双方審尋期日

裁判官が債権者と債務者双方から話を聞く手続です。基本的には双方審尋が実施されますが、場合によっては、債権者が供託金を多めに支払うことで双方審尋期日を経ないで仮処分命令を得ることができるケースもあります。

4 供託

裁判所は、仮処分命令を発令する場合、債権者に対して保証金の供託を求めます。
債権者は裁判所によって定められた供託金額を法務局で供託し、供託書の写し及び目録等を裁判所に差し入れることになります。
なお、供託金は、基本的に削除完了後に返還されますが、返還までに時間を要する場合があります。

【供託金額】(目安)
  • 債務者審尋をした場合 10万円~15万円
    (但し、削除対象が多い場合には増額となります。)
  • 無審尋の場合 30万円

5 仮処分命令発令・決定正本交付

供託書の写し及び目録等の差入れが完了すれば、投稿記事削除の仮処分命令が発令され、その決定正本が交付されます。

6 サイト管理者等への削除要請

裁判所から仮処分命令を発令した場合、サイト管理者等に対して仮処分命令の決定正本の写しを提示するなどして書き込みの削除を求めることになります。
なお、サイト管理者等によって取扱いが異なりますので、各ウェブサイトなどで確認する必要があります。

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