書き込んだ者の特定ss

サイト管理者等に対する請求

発信者は基本的にはアクセスプロバイダを介してウェブサイトにアクセスし、書き込みを行います。
このため、発信者と直接接点のないサイト管理者やサーバ管理者は、発信者の氏名・住所といった情報を持っておらず、IPアドレス等のアクセスログを持っているに過ぎない場合が多いです。( ⇒ 「IPアドレスとは」 )
そこで、通常は、サイト管理者等にIPアドレス等のアクセスログの開示を請求し、これをもとに発信者が経由したアクセスプロバイダを特定する作業が必要となります。
なお、サイト管理者等がIPアドレス等の発信者情報を任意に開示することはほとんどありませんので、一般的には、発信者情報開示仮処分命令を取得したうえで開示を求めることになります。

メール等での請求

サイト管理者やサーバ管理者は、通常、発信者情報の開示について独自のルールを設けており、発信者情報開示の請求があればそれに則って対応しています。
しかし、この方法で発信者情報が任意に開示されることはほとんどありません。

プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求

サイト管理者やサーバ管理者はプロバイダ責任制限法の規制の対象となっています。
そして、プロバイダ責任制限法の運用については、インターネットサービスプロバイダ等で構成される一般社団法人テレコムサービス協会がガイドラインを定めています。
問題のある書き込みについては、このガイドラインに則ってサイト管理者等に対して発信者情報の開示を請求することができます。請求を受けたサイト管理者等はこのガイドラインに則って開示するか否かを判断することになります。
しかし、この方法で発信者情報が任意に開示されるケースは非常に稀です。

発信者情報開示仮処分命令の取得と開示要請

サイト管理者等に対するメール等での開示請求やプロバイダ責任制限法ガイドラインに則った開示請求を行なっても、サイト管理者等が任意に開示に応じることはほとんどありません。
そこで、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分命令を申し立てて、裁判所の仮処分命令を取得することで、サイト管理者等に発信者情報を開示させることができます。

アクセスプロバイダの特定

次に、サイト管理者等から開示を受けたIPアドレスから、投稿に使用されたアクセスプロバイダを特定します。

アクセスプロバイダに対するアクセスログの保存要請

アクセスプロバイダは発信者の氏名・住所等の情報の開示については非常に慎重です。
そのため、アクセスプロバイダから発信者情報の開示を受けるためには、基本的に裁判所の勝訴判決を取得する必要があります。
しかし、アクセスプロバイダにおけるアクセスログの保存期間は3か月~6か月程度と短期間です。
そこで、裁判所に訴訟を提起している間に保存期間が経過してしまうことがないように、次の方法でアクセスプロバイダに対してアクセスログの保存を要請する必要があります。

書面でのアクセスログの保存要請

アクセスプロバイダごとに対応は異なりますが、アクセスプロバイダに対して書面で特定のアクセスログを保存するように要請します。

発信者情報消去禁止仮処分命令の取得と保存要請

アクセスプロバイダの任意の協力が得られない場合には、裁判所に対して発信者情報消去禁止の仮処分命令を申し立て、裁判所の仮処分命令を取得することで、アクセスプロバイダにアクセスログを保存させることができます。
もっとも、裁判所の仮処分命令を取得した場合、アクセスプロバイダは、通常、任意にアクセスログを保存してくれます。

アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟

アクセスプロバイダは発信者の氏名・住所等の情報の開示については非常に慎重です。そのため、アクセスプロバイダから発信者情報の開示を受けるためには、裁判所に対して発信者情報開示請求訴訟を提起し、勝訴判決を取得したうえで、アクセスプロバイダに発信者情報の開示を要請する必要があります。

IPアドレスとは

IPアドレスとは、インターネットに接続するすべての端末に割り当てられる記号です。
同じIPアドレスは同時刻に複数の端末に重複して割り当てられることはありません。基本的には特定の時刻において特定のIPアドレスを使用している端末は1つに特定することができます。
そのため、IPアドレスと書き込んだ日時が判明すれば、書き込んだ者を特定することができます。またIPアドレスを用いることで書き込んだ者が経由したアクセスプロバイダを特定することも可能です。

主流のIPv4という方式では、IPアドレスは基本的に3桁の数字4組で表記されます。
例:「121.121.121.121

ただし、「0」は省略されます。
例:「012.001.401.290」の場合

「12.1.41.29」と表記されます。

メール等での請求

サイト管理者やサーバ管理者ごとに取扱いが異なりますが、通常は各ウェブサイト上に設置されたウェブフォームないし記載された請求先メールアドレスを利用して、発信者情報の開示を求めることになります。
しかし、サイト管理者等の多くは発信者情報の任意開示を行っておりません。

プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求

サイト管理者やサーバ管理者に対してはプロバイダ責任制限法ガイドラインに則って、次の手順で発信者情報の開示を請求することができます。しかし、サイト管理者等の多くは発信者情報の任意開示を行っておりません。

爆サイ.comの場合

爆サイ.comはプロバイダ責任制限法ガイドラインに則って請求した場合にIPアドレス等の発信者情報が開示してくれる場合があります。

1 発信者情報開示請求書の送付

サイト管理者等に対して侵害情報の発信者情報開示請求書を送付して、問題のある書き込みを行った発信者の特定に資する氏名、住所等の情報を開示するよう求めます。
なお、侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書の書式はプロバイダ責任制限法関連情報WEBサイト(http://www.isplaw.jp/)よりダウンロードできます。

2 発信者に対する意見照会

請求を受けたサイト管理者等は、発信者と連絡を取ることができない場合等を除き、原則として発信者に意見照会を行います。
その回答期限が経過した後、請求者に正式な回答を行うところが多く、回答が得られるまで通常は1か月程度かかります。

ガイドラインに則った請求の際は以下の点に注意が必要です

意見照会により、請求者が発信者情報の開示を求めていることが発信者にわかってしまいます。
また、氏名など発信者に知られたくない情報がある場合にはそのことを請求時に明らかにしておく必要があります。
なお、意見照会の際に、発信者に示しても良い情報の範囲についてサイト管理者等から問い合わせがある場合もあります。

発信者情報開示仮処分命令の取得と開示要請

多くのサイト管理者等は発信者情報を任意に開示しておりません。そこで、裁判所に対して投稿記事削除の仮処分命令を申し立てて、裁判所の仮処分命令を取得したうえで、サイト管理者等に発信者情報の開示を求めるのが一般的です。

1 発信者情報開示の仮処分命令の申立て

発信者情報開示の仮処分命令申立書及び添付書類を準備して、管轄裁判所にこれを提出して仮処分命令を申し立てます。

管轄裁判所

基本的には相手方である管理者等の住所地等(相手方が法人の場合:主たる事務所又は営業所の所在地)

*相手方の住所地等が海外の場合でも一定の場合には日本の裁判所で仮処分を申し立てることができます。

申立書及び添付書類

発信者情報開示仮処分命令申立書には、当事者、権利侵害の明白性の説明、仮処分命令によって早期に保全すべき必要性などを記載する必要があります。
また、開示の対象となる書き込みの目録(投稿記事目録)、開示すべき発信者情報の目録(発信者情報目録)を用意する必要があり、必要に応じて証拠資料を添付する必要があります。
債務者(削除義務者)のサイト管理者等が法人である場合には、資格証明書を添付する必要があります。

なお、発信者情報開示仮処分命令の申立てにおいては、権利侵害が明白であることまで要求されており、投稿記事削除仮処分命令の申立てよりも要件が厳しくなっております。

2 債権者面接

仮処分を申し立てた場合、債権者(開示請求者)本人との面接を行う場合があります。面接では主張内容について裁判官から質問されます。

3 双方審尋期日

裁判官が債権者と債務者双方から話を聞く手続です。基本的には双方審尋が実施されますが、稀に、債権者が供託金を多めに支払うことで双方審尋期日を経ないで仮処分命令を得ることができるケースもあります。

4 供託

裁判所は、仮処分命令を発令する場合、債権者に対して保証金の供託を求めます。
債権者は裁判所によって定められた供託金額を法務局で供託し、供託書の写し及び目録等を裁判所に差し入れることになります。
なお、供託金は、基本的に開示完了後に返還されますが、返還までに時間を要する場合があります。

【供託金額】(目安)
  • 債務者審尋をした場合  10万円~15万円
    (但し、開示対象が多い場合には増額となります。)
  • 無審尋の場合 30万円

5 仮処分命令発令・決定正本交付

供託書の写し及び目録等の差入れが完了すれば、発信者情報開示の仮処分命令が発令され、その決定正本が交付されます。

6 サイト管理者等への開示要請

裁判所から仮処分命令を発令した場合、サイト管理者等に対して仮処分命令の決定正本の写しを提示するなどしてIPアドレス等の発信者情報の開示を求めることになります。
なお、サイト管理者等によって取扱いが異なりますので、各ウェブサイトなどで確認する必要があります。

アクセスプロバイダの特定

サイト管理者等からIPアドレスの開示を受けたら、これを用いて投稿に使用されたアクセスプロバイダを特定することができます。IPアドレスを用いてアクセスプロバイダを特定する方法は次のとおりです。

「Whois検索」の利用

「whois検索」は、特定のウェブサイトのURLからそのウェブサイトの管理者を調査 したり、特定のIPアドレスからそのIPアドレスの管理者、すなわちアクセスプロバイダを調査する機能を備えたウェブサイトです。 そこで、サイト管理者等から開示を受けたIPアドレスを用いて「whois検索」でアクセスプロバイダを特定します。

書面でのアクセスログの保存要請

アクセスプロバイダごとに対応は異なりますが、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を予定しているため、特定のアクセスログを保存するように書面で要請します。
アクセスプロバイダにはアクセスログの保存義務はありませんが、多くのアクセスプロバイダが保存に協力する旨回答してくれます。また個別の回答は行わなくとも事実上アクセスログを保存してくれるアクセスプロバイダもあります。

発信者情報消去禁止仮処分命令の取得と保存要請

アクセスプロバイダの任意の協力が得られない場合には、次の手順で裁判所に対して発信者情報消去禁止の仮処分命令を申し立て、裁判所の仮処分命令を取得することで、アクセスプロバイダに対してアクセスログの保存を求めることになります。

1 発信者情報消去禁止の仮処分命令の申立て

発信者情報消去禁止の仮処分命令申立書及び添付書類を準備して、管轄裁判所にこれを提出して仮処分命令を申し立てます。

2 債権者面接

仮処分を申し立てた場合、債権者(請求者)本人との面接を行う場合があります。面接では主張内容について裁判官から質問されます。

3 双方審尋期日

基本的に裁判官が債権者と債務者双方から話を聞く双方審尋期日が開催されます。

4 供託

裁判所は、仮処分命令を発令する場合、債権者に対して保証金の供託を求めます。
債権者は裁判所によって定められた供託金額を法務局で供託し、供託書の写し及び目録等を裁判所に差し入れることになります。
なお、供託金は、基本的に開示完了後に返還されますが、返還までに時間を要する場合があります。

5 仮処分命令発令・決定正本交付

供託書の写し及び目録等の差入れが完了すれば、発信者情報削除禁止の仮処分命令が発令され、その決定正本が交付されます。

6 サイト管理者等への開示要請

裁判所から仮処分命令を発令した場合、アクセスプロバイダに対して仮処分命令の決定正本の写しを提示するなどして、アクセスログの保存を求めることになります。

アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟

アクセスログの保存が完了したら、次の手順で裁判所に対して発信者情報開示請求訴訟を提起して勝訴判決を得たうえで、アクセスプロバイダに対して発信者情報の開示を求めることになります。

1 発信者情報開示請求訴訟の提起

発信者情報開示請求の訴状及び添付書類を準備して、管轄裁判所にこれを提出して訴訟を提起します。

管轄裁判所

原則として被告であるアクセスプロバイダの主たる事務所又は営業所の所在地等を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となります。
もっとも、訴訟では応訴管轄が期待できますので、被告が異議なく応訴する限りどこの地方裁判所でも可能です。

*相手方の住所地等が海外の場合でも一定の場合には日本の裁判所で仮処分を申し立てることができます。

訴状及び添付書類

発信者情報開示請求訴訟の訴状には、当事者、権利侵害の明白性の説明、開示を受ける正当な理由などを記載する必要があります。
また、開示の対象となる書き込みの目録(投稿記事目録)、開示すべき発信者情報の目録(発信者情報目録)を用意する必要があり、必要に応じて証拠資料を添付する必要があります。
被告のアクセスプロバイダが法人である場合には、資格証明書を添付する必要があります。

なお、発信者情報開示仮処分命令の申立てにおいては、権利侵害が明白であることまで要求されており、投稿記事削除仮処分命令の申立てよりも要件が厳しくなっております。
また、Twitterのように書き込み自体の発信者情報をそもそも記録していない場合には、基本的に侵害情報の発信者情報の開示は難しくなります。

2 プロバイダ側の意見照会

訴訟を提起した場合、被告のプロバイダ側は、対象となっている書き込んだ者に対して、発信者情報の開示に同意するか否かの意見照会を行います。

【発信者が同意した場合】

判決を待たずに被告のプロバイダ側から発信者情報が任意開示されます。

【回答が無い場合または開示拒否の場合】

被告のプロバイダは開示請求に対して争うことになります。

3 訴訟の進行

発信者情報開示請求訴訟では、特段の事情がない限り、各書き込みが原告の権利を侵害したことが明白か否かが争点になりますので、多くのケースで2回から3回の口頭弁論期日で終結となり、判決期日が指定されます。
意見照会の回答時期及び回答結果によってはもっと円滑に訴訟が終結することもあります。

4 勝訴判決の取得と開示要請

第一審で開示を認容する勝訴判決が出た場合、プロバイダ側がこれに対して控訴することは稀ですので、基本的にはそのまま判決が確定します。
この場合、プロバイダも発信者情報を任意に開示してくれるので、原則として強制執行までは不要です。

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